明科事件と警察官吏功労記章制度


 『世界』2009年2月号を読む。
 「泡瀬干潟埋め立て差止判決の意義」やら「「沖縄ノート」訴訟と表現の自由」など評論したい論考が多々あったが、今回は、「大逆事件」(田中信尚)(荻野富士夫)。

 大逆事件の発端とされた明科事件の地、明科公民館には、「大逆事件コーナー」があるという。そこには、明科駐在所の小野藤彦巡査に対する表彰展示がある。
 大逆事件が国家の大冤罪とされている今時、どのような趣旨で展示がなされているのであろうか。そして、「大逆罪発覚」の標柱の存在にも驚かされた。

 ここで示したいことは、警察官吏功労記章制度についてである。「大逆事件」が契機となり、この制度が創設され、時の人小野巡査が受章者第1号であるという。冤罪という虚構をでっち上げる国策に貢献したからに他ならない。

 この功労記章は、冤罪事件を増幅させてきた。
 その1例をみよう。静岡県本部刑事課の紅林麻生刑事といえば、何と351回の表彰を受けていた。しかし、彼が捜査主任であった「二俣事件」、「小島事件」、「島田事件」は、いずれも苛酷な拷問で得られた自白に基づくものであり、最終的には、いずれも無罪。

 そして、こうした表彰制度は、今でも、理不尽な状況に驚かされる。
確か、2004年、福島県大熊町の県立大野病院で帝王切開により出産した女性が死亡。このことが医療過誤とされ、福島県警は、2006年、執刀した産婦人科医加藤克彦(かとう・かつひこ)さんを業務上過失致死の被疑容疑で逮捕。
 この時にも、表彰が誰かに与えられましたね。加藤さんは当然無罪ですが。
  http://nekodorobo.exblog.jp/8491616/
 
 警察における表彰とは、一体何のために、誰の犠牲の上であるのでしょうか。
                        Shoji YAZAWA