中山武敏弁護士からのメール

 毎日新聞2011年4月18日の記事より

 『今、平和を語る』で取り上げられた。
 



 そして、中山弁護士が原告弁護団長を務める東京大空襲訴訟での
意見陳述がメールで送信されてきた。
 是非、一人でも多くの人に紹介したいと思う。




 平成22年(ネ)第622号 損害賠償等請求控訴事件
控訴人(原審原告)  星野 弘ほか113名
被控訴人(原審被告) 国
              意   見   陳   述
                       2011年11月28日
東京高等裁判所第23民事部 御 中
             控訴人ら訴訟代理人弁護士   中 山 武 敏

 口頭弁論終結にあたって
1 司法への信頼
  原判決は,「原告らの受けた苦痛や労苦には計り知れないものがあったことは明らかである。」として原審原告らの被害事実を認めながら、その  救済は,「国会が,様々な政治的配慮に基づき,立法を通じて解決すべき  問題であるといわざるを得ない」等として、原審原告らの請求を棄却して  おります。
  判決翌日の各紙朝刊は、「司法は冷たすぎる」、「原告に募る司法不 審」との見出しで控訴人らの無念の想いを報道しています。
代理人は、原判決の誤りは、当審判決で正されるものと日本の司法を信頼します。戦時中、軍部が暴走し、戦争遂行の美名の下、政府に非協力的な国会議員を排除する翼賛選挙」で、露骨な選挙妨害がなされた昭和17年の鹿児島第二区の衆議院議員選挙を無効とする判決を大審院第四民事部吉田久裁判長は、特高警察の監視や東條英機、政府の圧力に屈することなく下し、国民の投票の自由と司法権の独立を守っています。3月10日の東京大空襲大審院も被災全焼していますが、大空襲の炎の中で、大審院の書記官、職員は、裁判記録を運び出され、吉田裁判長の判決原本は、大切に保管されているのです。(「気骨の判決ー東條英機と闘った裁判 官」清水聡著・新潮新書)
  日本の司法は生きています。
  当審裁判所は、控訴人4名の本人尋問を実施されました。控訴人らの苦しみ、痛み、悲しみ、想いに応えてくださるものと確信します。
2 歴史の審判に耐え得る判決を
  3月11日の東日本大震災、福島第1原発事故の惨状は、東京大空襲の惨状を想起させます。被災者の苦しみ、悲しみ、想いは本件控訴人らと重なります。
  くしくも大震災当日の朝日新聞朝刊ひと欄で、当代理人の活動を紹介 し、戦争被害者の「差別なき国家補償」を訴える弁護士との見出しで、 「高校も大学も夜間部だった。空襲で孤児になり小学校にも通えなかった被災者に、苦学した自身の生い立ちを重ねる。」との記事を掲載しています。(甲D64)
   恵まれた生活環境の中で、教育の機会を保障されてきた人には、教育の機会均等が奪われることが、いかに辛くて悲し事かを理解することは困難かもしれません。しかし、当事者の訴えに謙虚に耳を傾けることによって想像力を働かせ、その痛みを共感、共有するすることができると信じま す。
  毎日新聞大阪本社2011年4月18日付夕刊「今、平和を語る」記事も「65年消えぬ苦しみ」「民間人差別是正へ立法急げ」との見出しで当代理人のインタビュー記事 を掲載しています。( 甲D65)
  控訴人らの苦しみは被害当日にとどまらず、戦後現在まで癒されることなく継続しており、その救済は現在の緊急の課題です。
  11月4日付西日本新聞ひと欄も東日本大震災後、決意を新たにする。「平和がいかにもろい基盤の上に立っているか。空襲被害も震災も人ごとじゃない。戦争も差別も許さない。」との当代理人の想いを掲載しています。(甲D69)
  東日本大震災、福島第1原発事故の救済、支援、復興については、公費が投入されています。国家の主導により、国家総動員法等の下で戦争協力義務を課された控訴人らの被害が救済されるべきであることは当然の法理です。
  控訴人らは高齢であり、司法による救済の最後の機会です。軍人・軍属を差別することなく,同じ人間として認めて欲しい,このままでは死ぬに死にきれないとの控訴人らの本件訴えは、人間の尊厳,人間回復を求める訴えです。
  裁判所は、人権擁護の最後の砦です。司法が不条理な差別を是認することは許されません。本件は、未来への平和にもつながる歴史的な裁判でもあります。
  当審裁判所が、原判決の誤りを正し,憲法が要請する司法の任務,責任を果たし、歴史の審判に耐え得る判決を下されることを求めます。
                                                                  以上。