左精巣の機能不全は、労働能力の喪失と認められないのか。


 水戸地裁の判決の疑問点
 被害者の少年は、他の少年等の暴力行為により、左の精巣が機能不全となった。
 当職は、自賠責後遺障害による損害の場合と同様に、労働能力の喪失にあたると考え、逸失利益を求めた。
 
 ところが、水戸地裁は、
「右精巣は正常に機能し、それにより生殖機能に問題はないから、本件障害は、生殖機能に著しい制限のあるものであって性交不能をきたすとは認められない。そして、原告の年齢等を考慮しても、それにより直接原告の労働能力の喪失をもたらすものでないから、後遺障害逸失利益を認めることができない」という。

 男性の生殖器の障害、睾丸の1個の喪失、これが、後遺障害とならないと言うのだ。
 
 では女性の場合は、どうなるのであろうか。
 
  LABOR(LABOUR)
 これは、「労働」を意味するが
 もともとは、「生みの苦しみ」「陣痛」「出産」の意である。
 女性にとって、労働とは生むことなのだ。
 
 水戸地裁の理解では、子宮を喪失したとしても、人間の労働能力の喪失などにはあたらないということなのだろう。
 
 男だって、出産に寄与するのだ。
 会社などで、働くことが労働のすべてだと勘違いしているのではなかろうか。

 そして、若い少年の年齢だこそ、労働能力の喪失を考慮すべきでないのか。とにかく、判決の思考パターンが、当職とずれているといわざるをえない。

 差額説、損害事実説などに鑑み、皆さんは、どのように考えますか。