川崎協同病院医師殺人事件上告審決定を批判する

最高裁を打つ


 須田医師は、無罪であるべきだ。
 川崎協同病院に勤務していた須田セツ子医師。
 2009年12月7日、殺人罪に係る控訴審判決に対する上告棄却(甲斐睦夫裁判長、第三小法廷裁判官全員一致)。
 理不尽な判決。

 理由は、以下のとおり。
 上告審代理人の小職の上告理由は、『殺人罪に問われた医師』(現代人文社)に詳細に記載したとおりであるが、再論すれば、
  1)延命治療の差し控え(DNR)と医療行為の中止
  2)終末期医療と「脅迫の死期」
  3)殺意の不存在
  4)医の倫理と法の倫理の乖離
  5)自己決定権を行使できない患者と家族全員の同意
 
 司法の劣悪化が指摘されているところ、
 最高裁の劣悪化も同質、いや、それ以下。

 本件の決定をご覧あれ。
 法律論は、皆無に近い。三行半。
 憲法13条に見向きもしない。
 ところが、気管内チューブの抜管の違法性に関しては、
蕩々と事実認定。

 事実審でも認定しなかった、家族からの要請については、
 「被害者の病状等について適切な情報が与えられた上でなされたものでなく、上記抜管行為が被害者の推定意思に基づくということもできない」と言明。

 この判断に及び、裁判官がカルテなどを検証したとは思われない。
 事実認定も間違い、法的判断も、まして憲法判断もできない。
 これが、最高裁判所の決定。

 この度の決定と、2009年5月22日大韓民国の大法院の判決と対比されたい。

 生命倫理について根本的な学習することなく、皮相な判断をして、
 終末期医療に臨む医師を、現場から立ち去らせて
 司法(最高裁判所)は、国民にいかなる役務を提供したというのか。
                    
                       弁護士 矢澤磤治

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20091210/CK2009121002000071.html