黒い雪
今日は、大寒
朝日の朝刊に「雪が黒く見えた時代」が掲載されていた。
狂言「木六駄」が取り挙げられる。
太郎冠者は、酒樽を届けに行くように命ぜられたが、
寒さ(?)に負けて、酒樽を空ける話。
「降るわ降るわ,こりゃ、こりゃまた真っ黒になって降る」。
白い雪が黒く見える心理状況とは ?
中国北京では、焦げ茶色の太陽と黒い雪を見たことがある。
大気汚染が原因。
ふと、袴田巌に対する取調状況の日記を思い出した、
代用監獄で、黒いカーテンで閉じられた拷問場。
カーテンの隙間から見る視界全体が、真っ赤だというのだ。
そして、
「取調室の壁に一枚の絵がかけられていた。警察に来た当初はその絵を見上げると,景色は私の良心に一緒にほほえむものだったが、その景色は以後、悲しげな表情をあらわにした。代用監獄の電灯もすべて輝きを失っていた。物の色はもとのままだったが,以前と違って物すべてのなかに生命が失せていた。食べ物を見ると吐き気がした」(1981年11月8日).
すさむ気持ちを一掃する手紙が届いた。
兄の友人、小林康生さんからである。
「雪の色が白で本当によかった。
光と風が生み出す雪化粧ほど
美しいものを知らない。
思えば、はつゆきとを迎えるまでの
ソワソワした気持ち、なつかしい。
雪が舞い降りてくれば・・・いよいよ
来たかと心は落ちつく。
冬を受け入れる心にさえ固まれば。
覚悟を据える人の心はたくまし
く、美しいのです。
天が与えた苦難であって見れば
なおのこと
覚悟を据えてかかりましょう。
2012年正月 康」
ふと、ふるさとの庭を想い出す
庭先にあった、椿
雪の中で、緑と黄と赤が光っていた。