10.13集会妨害国家損害賠償請求事件

 「10.13集会妨害国家賠償訴訟の記者会見」より
                 
          弁護士会館 508 2008.12.3
                   弁護団長  矢澤磤治
 
 本日東京地裁民事33に提訴した、10.13集会妨害国家賠償訴訟(以下、「本件訴訟」という)について説明をいたします。話す内容は、3点あります。まず、本件訴訟の原因たる事実について、第2は、本件訴訟の法律上の問題点について、第3に、本件訴訟の意義についてでです。
 第1点は、本件訴訟の原因としての事実についてです。2008年10月13日に、土屋公献、森井真、古川路明らが呼びかけ発起人として、10.13集会実行委員会により、なかのZERO大ホールで「断ち切れ!核軍縮核競争と大戦の危機〈戦争と貧困強制〉に抗する10・13怒りの大集会」が主催されました。
 この集会は、自民党政府が憲法9条を無視し、自衛隊の海外への派兵、基地の強化、日米軍事同盟の強化などによりわが国を「戦争ができる国」とすることに対して、戦争と強制に対して断固たる反対運動を進めてゆくことをその開催趣旨としたものでありました。
 しかるに、公安二課を中心とした警視庁公安部および所轄警察署所属の警察官は、集会に対する重大な違法かつ不当な妨害行為を繰り返したのであります。
 本件訴訟は、本件原告である土屋らの要請に基づき、6・1集会においても、また10・13集会に先立って、弁護士を通じて、警視庁警視総監、警視庁公安部公安二課長、警視庁公安部公安三課長、中野警察署長に対して、10月6日に申入書を送付し、私服警官による集会会場の直近および周辺における集会活動を威圧する行為、参加者の撮影行為、監視行為、追尾行為、その他集会参加者の人権を侵害する行為を一切しないよう、また、必要に応じて、右翼団体に対する適切な防止・制止措置を講ずること。但し、これを口実に集会の過剰な警備をしないことを求めてきました。
 しかしながら、警視庁公安2課などの私服警官は、監視・威圧行為をしていた。そこで、原告の代理人弁護士が参加者に対する監視・威圧行為、撮影行為ならびに追尾行為をして集会の妨害をしないように抗議したのである。帽子・マスク・サングラス等の出で立ちで、道路上に立ち蠢く60人にも及ぶ私服警官の様子を想像していただきたい思います。
 しかるに、私服警官達は、弁護団の抗議を無視続けて、これらの不当な行為を散会するまで継続したのです。
 さらに、集会会場の途中にある喫茶店の内部には、3名の私服警官による路上を通過する参加者のビデオカメラによる撮影も行われていたことが確認されたのである。  
 第2に、本件国賠訴訟の法律上の問題点についてお話しいたします。
 わが国の憲法21条1項に定める集会の自由は、「市民的および政治的権利に関する国際規約(B規約)」の21条でも認められた権利であり、まさしく自由主義と民主主義の礎をなすものであります。集会の自由は、まず、集会の主催の自由を意味します。訴状では、これを認めた大阪高裁平成12年3月23日の判決が引用されています。また、集会の自由には、当然集会に参加する自由も認められます。集会への参加の自由は、憲法19条で定める思想・信条の自由を担保するものに他なりません。今回の警視庁公安2課の私服警官らの挙動は、集会参加者に対して監視・威圧行為、撮影行為ならびに追尾行為することにより、参加者の基本的人権を侵害したにとどまりません。なぜなら、こうした行為が日常的になされることにより、集会に参加を希望する者に威圧を与え、参加の機会を奪うことになるからです。
 さらに、本件では、参加者が写真、ビデオ撮影の被写体とされました。明らかに、公安2課の私服警官らの行為は、参加者個人の肖像権、人格権、プライバシー権を侵害するものであります。これらの権利がみだりに侵害されてはならないことは、最高裁判所も昭和44年12月24日のいわゆる京都府学連事件で明言するところであり、まさしく憲法13条の基本趣旨であります。
 ところが、警視庁および警視庁公安2課の私服警官らは、憲法13条、19条そして20条、さらには最高裁などの判決を、公然として無視し、本件の不法かつ違法な一連の行為に及んだものであります。公務員として、憲法や法律ならびに判例を遵守すべき組織と立場にある者がこれを踏みにじっている。これが、わが国の我々がおかれている現状であるということであります。本件国賠償訴訟の基礎となる法律論の基礎は、以上のとおりです。
 本件訴訟に意義について述べたいと思います。昨年には、自衛隊の「情報保安隊」による違憲・違法な国民監視活動が暴露されました。忌まわしい時代の憲兵隊が跋扈するようになったのです。わが国では、憲法を踏みにじる政党や組織や構成員によりますます軍国主義が進捗しつつあります。こうした在り方に対して、改めて根本的な問題提起をなし、本件訴訟により法的な対抗策を講ずるために、本件訴訟を提起した次第です。
 最後に、記者の皆さんに申し上げます。我々は権力に抗しております。しかし、それは、憲法を遵守する義務のある警視庁という組織とその構成員である公務員が犯した違憲・違法な不法かつ不当な行為に対して抗しているのです。本件訴訟の目的は、司法による判断により権力者による一連の不法行為を明らかにし、その再発を阻止することであることを期する事にあります。御理解とご支援をいただきたいと思います。


  
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